助けてマミーの話


明日はサーキットなので、いつものようにダットラに積み込みだ。
コンパネを敷いて、道具を用意して、ラダーレールをセットして、
踏み台を置いて、さぁバイクを荷台に積み込もう!

ちょっといつもより助走が短いが、まぁいいか。
うりゃーと走って、バイクはラダーに乗って、ぼくは踏み台に乗って、
あとちょっとの所で、止まってしまった。
リアタイヤはまだラダーレールの上だ。
押してみたが、やはり動かない。
しょーがないので、戻してやり直しだ。

今度は、かなり助走を付けて、おりゃーと走る。
バイクはラダーレールに乗って、ぼくが片足踏み台に乗って、
もう片足がダットラの荷台に乗った瞬間!!!
踏み台がかたむいて、足がズルっと滑ってしまった!

ガッシャーーーーン!!!!!

ぼくはガスペケの下敷きだ。
ダットラの荷台のフチにアッパーのナックル部分が刺さってる!!!!!
ぼくはガスペケを必死で支える。
起こそうとしてみたが、後ろタイヤがまだラダーレールの上なので、
右手をブレーキレバーから離せば、バイクが動いてしまうので、
右手は、ブレーキレバーから離せない。
しかも、体勢がまた最悪で、左手は、バイクとダットラに挟まれてる。
片足は、ダットラの荷台で、片足は踏み台の上か?よくわからん体勢だ。

全然、力を入れれない体勢で、この体勢を維持する力を抜くと、
多分、アッパーは砕けて、スクリーンも割れてしまうだろう。
何度か起こそうと試みるが、いくら限定解除の引き起こしが余裕で
できても、この状態で起こせる人間は、ほとんどいないだろう。

ぼくは、追い込まれていた
しょーがない。
おかんを呼ぶか…
29歳にもなって、大声で叫ぶ。

「かぁーさーん!」

うぅぅ、なんてかっこ悪いんだ…
近所にまる聞こえだ。
でも、マミーは出てこない。

「かぁーさーん!!!」
出てこない。

何故、力を必要とするヘルプなのに、「とぉーさーん」では、ないのか?
それは、元警察官の父親と、バイクを3台も所有するバカ息子の考えは、
交わる所がなく、お互いがお互いの事が世の中で一番嫌いだからだ(笑)
それは物心ついた時からだった。
パピーは、多分ぼくが生まれた時は「理想的な息子像」なるものがあり、
事ある毎にそれに、はめようとしてきたが、人間各々生きてるので、
そううまくは成長しない。
そうこうして、期待していた息子が、自分の召使いにならなかったので、
大っ嫌いになっていったようだ。
最近なんか、更年期障害(男もなるんだよ)も重なり、ヒドイものだ…

まぁおかんを呼んでる声がおとんの耳に入れば、流石に出てくるだろう。
とは、思ってたが。

何度叫んだだろうか。
10回は叫んだだろう。
バカ親は両方出てこない。

うちは、すさんだ家庭なので、ぼくは親に頼み事なんてした事はない。
ここまで、親を必要と感じたのは、悲しいかな、初めてだ。

「うぅぅ、お願いだから、出てきてくださいませ。」

「かぁーさーん」
は、何度も寂しく近所中に響き渡る。

おっ!ええ事を思いついた。
イグニッションキーがささってるじゃん!
ホーンがなるはずだ!!
既に割れたアッパーのナックル部分を、ダットラの荷台のフチに、そうっと置いて、
右手を最大限に力を入れて支えて、左手でパッとキーをONにする。

ビー!ビー!ビー!ビー!

こりゃー結構でかい音だ!!
やったぁー

しかし、これも空しく、鳴り響き、ただの近所迷惑の音となる…
奴ら(バカ親共)は何をやってるんだ!?!?

左手や、足などがシビレてきた。
これは、限界だな。
「もう諦めようか?」「いや、まだ我慢できるはずだ!」
の葛藤が頭の中をグルグルと回っている。
これは、水中息止め対決に似ている心理状況だ(笑)
「もう無理やって、顔上げて息しょー!」「いや、まだ我慢しても死なんやろ。」

しかし、もう限界だ。
この状態で5分以上耐えている。

ぼくは、イヤな2択に迫られた。
更に声のトーンをパワーをアップして、
「おーかーん!!!!!」と叫ぶか、
「だぁーれぇーかぁーーー!!!」と叫ぶか…

多分、うちのバカ親意外のご近所さんは、バカ息子の叫びと、ビー!ビー!
という音は絶対聞こえてるはずだ…
「だれかぁ〜」と叫べば、出てきてくれるだろう。

しかし、29歳。
さすがに、「だれかぁ〜」は言えない。
恥ずかしすぎる…

「おーかーん!!!!」
5度ほど、のどがちぎれるほど叫ぶと、なんと!!!!

向かいのおばちゃんが出てきてくれた!!!!

「どないしたん!もう出てくるかな?もう出てくるかな?って思っててんけど、
もう限界や思て出てきてん。バイクの下敷きにでもなっとんちゃうかな、思て!」

その通りです。と思ったが、
「うちの親呼んでもらえますか?」と平然なフリをして言った。
叫び声で、平然でないのは、バレバレだが(笑)

やっとこさ、うちのバカマミー登場だ。

向かいのおばちゃん、結構パワフルで、おばちゃん&マミーで事足りそうだったので、
手伝ってもらって、やっとこさ、人生最大の危機から脱出でけた。
おやじも呼ばんで済んだし、よかったよかった。
近所中に、バカ息子が。。って思われただろーけど、まぁええわ。

おばちゃんに丁寧にお礼を言うと、おばちゃんは、
「ほんま、バイクの下敷きになっとんか思たわ!」
だ、か、ら、、なってます…
いやいや、助かりました(笑)

うちのバカ親に聞くと、
「いやぁー全然聞こえへんかったでぇーテレビで世界柔道見とってーん。
ほら、柔道って声援とかあるやーん?」

なんてムカツクんだ。
じゃーこいつらは、外で何か邪魔で家に向かって放たれた、
車のクラクションにも気付かんのかい!!!!
はぁ…

左手はシビレていて気付かなかったが、エライ事になっていた。
こんないに痛いのは体験した事がない。
折れとんちゃうか?
明日のサーキット練習どうしよう…

結局、折れてはないようだが、カナリ痛かった。。

多分折とったんちゃうかなぁ?(笑)
1ヶ月経った今も痛い。
骨が欠けてて、その破片が違う所にくっ付いたように、
骨に突起物があるのがわかる...

【教訓】
1.車の運転(事故)がそうであるように、「慣れ」た頃が一番危険だ。
2.やはりナナハンは重い。
3.積み込みは、スリッパでは危険だ。
4.踏み台はないほうがイイ。